第2回は、日本体育大学スポーツマネジメント学部教授(憲法学)の清水雅彦氏を講師として、「労働組合と市民と野党の共闘~現政権の課題私たちの役割~」をテーマに、全労金・単組役員52名が参加して開催しました。
清水氏からは、①憲法とは何か、②日本国憲法と安倍・菅等自民党政権、③この間の運動を振り返り、今後の運動を考える、④この間の選挙を振り返り、今後の選挙を考える、等について、事例等を紹介しながらの説明を受けた。
①では、憲法の役割と構造や近代憲法と現代憲法について触れ、現代憲法とは、20世紀以降の労働運動・社会主義運動を受けて登場し、労働者の成果と資本家の妥協であるとされました。
②では、「人権規定と現実」について触れ、1989年に子どもの権利条約が国連で採択され、日本は1994年に批准しているが、「ブラック校則」がなくならない実態について紹介されました。次に、法の下の平等(14条)に関連して、日本では、法人税基本税率を引き下げ、穴埋めに消費税を増税していること、クオータ制の導入により、欧州を中心に女性国会議員4割や女性閣僚が半数となる国が増加していること等が紹介された。
夫婦・両性の平等(24条)について、民法733条、750条との関係に触れ、女性の再婚禁止期間については、3カ月から、100日間に短縮されたが、女性のみに禁止期間があること、夫婦同姓については、最高裁が「合憲」としたことへの課題認識が示されました。
自由権(人身の自由)については、2019年の諸外国の死刑制度の状況について、全面廃止国 106、法律上・事実上廃止国36に対し、日本は死刑執行国20のうちのひとつであり、世論調査をすると、死刑制度を支持する人が多い等、人権意識の低さに対する課題認識が示されました。
次に自由権(精神的自由)については、思想・良心の自由(19条)では、学校現場における日の丸・君が代の強制、信教の自由(20条)では、戦争犯罪者を祀っている靖国神社の首相の参拝、学問の自由(23条)では、学術会議任命拒否問題等について、課題認識が示されました。
自由権(経済的自由)では、新型インフルエンザ等特措法における私権制限にかかる課題認識が示されました。社会権については、生存権(25条)に触れ、金額・受給率の低い生活保護、本人自己負担率が増加し続ける健康保険制度について述べられました。加えて、1994年の地域保健法改正により、保健所の広域化・統廃合が進んでおり、全国の保健所数は、1991、1992年の 852か所から、2020年には 469か所になったことが報告されました。
教育を受ける権利(26条)については、奨学金制度の課題、所得による教育格差に触れられ、「東北・九州(宮城・福岡除く)」と「東京」の大学進学率が倍程違うことが報告されました。
労働者の権利(27条・28条)に関しては、日本の年間総労働時間、年休付与数、取得率、組合組織率、労働協約適用率と欧州との違いについて報告を受けました。
次に、「統治規定と現実」と題して、天皇(第1章)に触れ、戦前と戦後の天皇制の違いや、天皇制が維持されたのはマッカーサーの意向により、日本を統治しやすくするため(日本の占領政策を順調に進めるため)維持したとされました。
平和主義(第2章)では、軍隊をもたない国家は26か国あることが紹介されました。
内閣(5章)では、7条解散を連発し、「解散は首相の専決事項」としているが、憲法にこのような記載はないことが触れらました。
③では、「市民と野党の共闘」ではなく、「労組と市民と野党の共闘」が必要とされ、運動の土台を作った「戦争をさせない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」についての説明を受けました。そのうえで、この間の総がかり行動での活動に触れ、成果として、「連合、全労連、全労協加盟組織の統一行動の実現」「分裂していた5月3日中央の憲法記念日集会は2015年より統一集会が実現」等があげられ、課題として、「都道府県単位での総がかり体制の構築の不十分さ」が示されました。
④では、資料を用いながら、この間の選挙結果について説明を受けました。そのうえで、運動体の課題として、学習活動の重要性や、全国各地での労働組合と野党の共闘が作ることができるのか否かが重要であることが投げかけられました。