第4回は、東京大学法学部准教授の前田健太郎氏を講師として、「政治分野における男女平等参画・ジェンダーの視点から民主主義を考え直す」をテーマに、全労金・単組役員等50名が参加して開催しました。
前田氏からは、①政治を見る視点の重要性、②ジェンダー規範の働き、③民主主義とはなにか、④女性の過小代表の原因、⑤女性の過小代表の帰結、⑥労働組合への期待、等について講演を受けました。
冒頭、異なった視点でものの見え方が変わることの説明に使用したことで有名となったイラストや、日本の国会の様子を撮影した写真を紹介され、イラストも写真も人によって受け止めが様々であることを紹介されました。
①では、日本の政治の特徴として、「有権者の半数は女性だが、政治家の大半は男性」であることを挙げ、その状態をなぜ「民主主義」と呼べるのか投げかけがあり、男性の政治学者はジェンダーの視点が欠如していたことを挙げました。そのうえで、ジェンダーの視点(社会現象を捉える際に、性差を意識する)を導入すると、政治の見え方は変わると投げかけられました。
②では、「男性は男らしく、女性は女らしくしなければならない」とするジェンダー規範の働きは、社会規範の一種であり、法律に書かれているわけではないが、理念的にそれぞれの心の中に存在するものであり、違反すると社会的な制裁を受けるとされました。そして、法律との違いは、ジェンダー規範は、国家ではなく、社会による制裁を受け、人々は法律のことはよく知らなくても、家族や学校・メディアを通じて、社会規範を身につけていくとされました。そして、このジェンダー規範は、「男性に高い地位を付与し、女性には男性の補助を期待する」ものとして紹介されました。また、男性の「自分自身は差別していない」との感覚は、本当にそう思っているが、ただ、結果として、差別に繋がっていることに気付いていないことを指摘されました。次に、組織とジェンダー規範との関連を見た時に、問題点として、企業や議会の組織規範が求めるものが、「男らしさ」と重複している点について挙げられました。そのため、女性が組織規範に従うと、ジェンダー規範に違反し、ジェンダー化された組織は、女性がいない政治が「当然」となるとされました。
③では、民主主義の定義の変遷について触れ、政治学者の多くは男性であったことに触れたうえで、民主主義の最小定義である競争的な選挙(シュンペーター)について、19世紀のアメリカ・イギリスの体制に基づいた定義であり、女性参政権は除外されていたこと、すなわち、女性参政権は民主主義の要件ではなかったことを説明されました。また、アメリカから民主主義が始まったとするのは誤った認識であり、ある特定の視点からみた民主主義に過ぎないとされました。そのうえで、先発国としては、ニュージーランドが1893年に女性参政権を導入していることを紹介されました。また、21世紀の民主主義の世界的な傾向としては、女性と男性が対等に代表される政治体制であり、第3の民主化の波の中で日本は乗り遅れていることを説明されました。