●「定期昇給維持分」とほぼ同じ
「賃金カーブの維持」とともに「賃金水準の維持」「賃金構造の維持」とか「定期昇給の確保」という言い方もされますが、これらは、基本的に同じ概念を言い表しています。
民間の多くの企業の正規雇用労働者の賃金は、年齢や勤続年数とともに賃金が上昇していく「年功型賃金」がベースになっています。年功型賃金の特徴は、雇用の出発点の若年労働者の賃金を低く抑えて、年齢の増加によって右肩上がりに賃金が上昇し、生計費を賄っていくシステムです。
年功賃金といっても、査定昇給部分があれば、全員一律に同額昇給するとは限りません。
右図は、学校を卒業した就職時点aから、定年xに向かって右肩上がりに上昇していくカーブがあります。このカーブを「賃金カーブ」と呼びます。
春闘の歴史は長いのですか?「春闘の終焉」など言われていますが、最近の闘争態勢の特徴は?
右図の例でみると、年齢30歳の人が31歳になり、金属が1年増えた場合、Aの地点からBの地点に賃金が移ります。AからBへの昇給額が定期昇給額です。「賃金カーブの維持」とは、30歳の人が31歳になるとA→Bへ、31歳の人が32歳になるとB→Cへと上方向に移動することによって、a→xのカーブの水準を維持することです。その場合に必要な原始が「賃金カーブ維持分」です。
30歳の人が31歳になったときに1年先輩が31歳のときに得ていた賃金を得るのですから、これは「賃金水準の引き上げ」(ベア:ベースアップ)ではありません。ベアは、B→B'と上のカーブに移行します。生涯賃金(axzを結ぶ三角形の面積)も変わりません。また、労務構成(平均年齢・平均勤続年数など)が不変なら、支払う賃金の原始も不変なので、カーブ「維持分」のための新たな原資の持ち出しはありません。
(労大ハンドブック 労働大学調査研究所編 「2006春闘」より抜粋)